潜入恋愛 ～研修社員は副社長！？～

これでも接待ゴルフをそこそこで切り上げてやって来たんだと言い訳する相手は、呆然としている娘に笑いかけ、ついでに俺に目線を流して一礼した。


「お父さん…」


どうして此処へ？と声を発する香純は、ひょっとして迎えに来たの？と訊き返す。


「そうだ。こいつが迎えに来て、と甘えるもんだから」


滅多とないことだから、珍しく思ってやって来た。

しかし、その場にまさか俺が居るとは思ってなかったみたいで、「謀ったな」と母親を睨み付け、彼女は彼女で、「何のこと？」としらばっくれてソッポを向く。



「お父さん」


丁度良かったと思った俺は、今回香純と暮らさせてくれることを許可してくれたお礼を言おうと思い呼びかけた。
しかし、振り返った相手は顔を強張らせ、「君に馴れ馴れしく『お父さん』と呼ばれる筋合いはない！」と突っ撥ねてくる。



「また直ぐそんな態度を取って」


香純と母親は揃って父親を叱り、それでも彼はムッとして、別に謝らないでいたんだが＿＿。



「まあいい。とにかく時間もあることだし、折角だからラウンジにでも行こう」