潜入恋愛 ～研修社員は副社長！？～

ビップしか入れない方がゆっくり出来ていいな、とカードを用意する父親は、受付でそれを提示し、ワンランク上のラウンジへと連れて行ってくれた。


そこには広くて大きい窓が壁一面にあり、その下は長いカウンター席になっていて、間近でエアポートが見れるように設えてあった。



「わぁ、すごい！」


いつもこんな所を利用しているの？と燥ぐ香純は、ずらりと並んだ料理にも目を輝かせ、どれから味見しよう…とワクワクしながら見つめている。



「ちょっと」


肩を叩いた彼女の父親は、話がある…と俺を誘い、窓際の席へ連れて行くと先にどかっと腰を下ろした。

その態度に俺は何の説教が始まるのかな、と思いながら隣の席に座り、カウンターの上で手を組み、いつでも来い…と相手の方を見返す。



「前にも話したと思うんだが」


前置きすると香純の父親は前を向いていた目線を俺に向け直し、「香純の家事能力は圧倒的に低いぞ」と念押してくる。


「一緒に暮らしても手料理は滅多と作らないと思う。まあそれでも何とか努力はするだろうが、とにかく期待はしない方がいい」