潜入恋愛 ～研修社員は副社長！？～

「あ、あの、私……」


踏み出そうとしてきた相手に気づき、つい足を後退させる。
その途端、とん…とお尻がベッドの上に着き、思いがけず座る羽目になった。


「大丈夫ですか？ふらついてますよ」


声をかけながら距離を縮めてくる相手を凝視し、私はただ目を丸くするだけで……。



「ほ…本当に、越智さん！？」


別人とか冗談じゃないよね？と疑いながらも彼を見直すと、相手はフッと微笑み、「間違いないです」と返事する。


「うそ」


ついそんな言葉を発してしまい、相手の顔を確かめ返す。
彼は私の眼差しを受け止めて困ったような顔つきになり、「嘘じゃないんだけど」と困惑気味に返事した。


「よく言われるんですよね。普段が普段だから」


前髪を指で下ろしながらそう言うのを見て、ああ本当に彼だ…と再確認。


「顔だけ見たら如何にも…って感じがするみたいで、そういうの何だか妙に嫌いで」


だから、人前ではあまり素顔が見えないよう前髪とメガネで隠すクセがついてしまった…と彼は言い訳のように話すんだが。



（勿体ない）