潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
必死でスマイルを浮かべて相手に質問を返す。
今朝見た時と同じように前髪で顔を隠すようにしている彼は、メガネの奥の目線をすいっと逸らし、結んだ唇を開いてこう呟いた。


「いえ、あの……今日は何をしたらいいのかと思いまして」


研修社員として出向してきたのはいいけれど、これと言ってやりたい事とかも特に無さそうな彼は迷うような発言をした。


「何か手伝えるような事があったら是非させて貰いたいんですけど」


つまりはそれって、私の仕事の補佐をしてくれるという意味なんだろうか。
そりゃ補佐的な仕事なら何でもやって欲しいのは確かだけど、研修にきた彼にそれをお願いしてもいいのかな。


「えーと、では…」


ちらっと課長の方に目線を配っても当然のことながら全く無視。
私の好きなように指導してもいい…という意味なんだろうと捉え、私は彼にお願いした。


「生産工場への発注数に入力ミスがないかどうかの再確認をして貰ってもいいですか?それを間違えるとロスも増えるし、商品によっては割り引いてでも捌かないといけなくなってしまうので」


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