潜入恋愛 ～研修社員は副社長！？～

「お休みなさい」


そう言って柔らかいものが頬に触れてきた。
驚いて目を丸くしているとすぐ近くに彼の顔があり、その唇が細くなっていくのが見え、ハッと我に返って頬に手を当てた。


「また明日、オフィスで」


会うのが楽しみだと言わんばかりの眩しい笑顔に胸が鳴る。

どうしてこんな素敵過ぎる相手が私の彼氏に立候補してきたのかが分からず、「冗談も程々に」と言いたくなる気持ちを抑え、無言で頭を下げてから立ち去った。


走りながら、彼が私に会いたいと思ってくれていたことが、ちょっぴりだけど嬉しいと感じた。

自分もいつも優しそうな彼の文面を見るだけで心が癒されていたのを思い出し、幸か不幸か、彼と付き合うことになったのが、まだ夢を見ている様な気分で帰路へと着いた。