潜入恋愛 ～研修社員は副社長！？～

ぼうっとしたまま、いつまでも彼の立ち去った方向を眺めていた所為だろうか、ポン！と肩を弾くように叩かれ、ビクッとして振り向いた。


「主任、何ぼんやりしてるんですか？」


ニコッと笑みを見せるのは、新人社員の彼女だ。


「え？そう？」


私は咄嗟に誤魔化し、別にぼんやりなんてしてないけど…と呟いたが。


「してますよぉー。この最近ちょっとおかしいです」


彼が出勤しだしてから…と言われ、ギクッとしつつも変に気が回るな…とドギマギした。


「ここ二、三日寝不足なだけよ。だから、ぼうっとしてる様に見えるだけ」


気を引き締めないとね…と笑うと新人社員の彼女は、納得いかない感じながらも、ふぅん…と唸り。


「…でも、あの越智さんて人、大分風変わりな方ですよね。主任とは普通にお話もされるみたいだけど、私や他の人が話しかけても、ほぼほぼ無視に近い状態ですよ」


雰囲気も暗そうだし、あれで営業なんて務まるんでしょうか…と素朴な疑問をぶつけてくる。


「まあ、人ってそれぞれだし、明るいからと言って営業に向いてるとは限らないんだし」