潜入恋愛 ～研修社員は副社長！？～

「すみません。お先に失礼します」


そんな矢先に彼が椅子から立ち上がり、皆に聞こえる声で挨拶をした。
同じ島の社員達にはその方が更に驚きだったらしく、私よりも彼に目線を向け直し、お疲れ様…と返事をしている。



「珍しい…」


初めてじゃない？と隣の席にいる社員に声をかけているのは新人社員の彼女。
何かいい事でもあったのかなぁ…と推測している様子を窺いながら椅子をしまい、それじゃ…と言って部署を出ようと足を向けた。



「お疲れ様でした」


後ろから声をかけられ振り向いて挨拶を返す。
越智さんとは何処で落ち合うとか決めてもいなかったけれど、多分外へ出たら待っててくれるんだろうと感じながら部署を後にした。


さっと着替えてメイクをやり直して通用口を出ると、案の定、彼はオフィスの壁際に立っていた。スマホを片手に真面目そうな横顔をしている彼に近付いた私は、「お待たせしました」と声をかけた。


越智さんは目線を上げると、いいえ…と返事をして、それを確認した私は、行きましょうか…と歩を進める。