潜入恋愛 ～研修社員は副社長！？～

「私は、子供の頃から母子家庭に近い様な環境で育ちました。両親は揃ってるんですけど、共に仕事熱心な人達で、自分の仕事を投げ打ってまで、相手に合わせるようなことはしなくって。
…だから私、子供の頃はいつも殆ど一人でお留守番というのが多かったんです。そんな風だから、家庭料理といえば、レトルトとかスーパーのお惣菜が主で、手料理なんてものをあまり食べた記憶もありません。
それに、両親の不在中には火を使ってはいけないというのがルールで、でも、食べる物には困らないように…と思った母が、レンジでチンすればいいだけの商品を常に家の中に置いていて……」


それがハピネス・マザーズフードの商品でした…と言うと、越智さんは非常に真面目な顔つきで頷いた。


「私にとって、マザーズの商品は正しく母親の味みたいなもの。だから、私のような環境で育つ子供達にも、もっと安全で美味しくて、嬉しくて楽しくなるような商品を世の中に送り出したいと思って、あのオフィスへの就職を希望したんです」


自分の子供時代を振り返って言うと、向かい側に座る彼はじぃっとこっちを見つめたまま、無言で頷きを繰り返している。