潜入恋愛 ～研修社員は副社長！？～
だから、私は未だに片付けというのがどうにも下手くそ。
細かく分類別にするというのは苦手で、仕事と同じようには、部屋の中も綺麗には出来ていない。


「それなら俺の家も似たようなもんかな」


越智さんはそう言うと私の顔を窺うように見た。
私は目を向けると、どういう意味ですか？と首を傾げ、彼のことを聞いてみたいと言葉を待った。


その時、一本のベルが鳴り響いた。
一瞬ビクッとして自分のスマホが鳴りだしたのかと思ったけど、そうではなく、鳴ったのは目の前にいる彼のスマホ。

越智さんはメロディを耳にした瞬間、ジロッと胸ポケットの中を見つめ、立ち上がると鳴っているスマホを取り出し、私の方へ向かって謝った。


「すみません、ちょっと出てきます」


さっと背中を向けると急いでバルコニーへ向かう彼。
そのままの姿勢で電話に出ると話を聞いているみたいで、時々頭を揺らしながら、さらりと前髪を手で搔き上げる。

瞬間、それを見ていた女性たちの視線が止まる。
そりゃ見た目が暗そうな彼が、髪を上げた途端に別人のようにイケメンになるのだから、もの凄く驚くに違いない。


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