命令恋愛
「京太!」


後ろ姿に声をかけると京太は一旦立ち止まった。


しかし、振り向くことなく歩いて行く。


聞こえなかったのかな?


それならもう1度大きな声で……呼ぼうとすると、慌てた様子で香菜美が教室から出て来た。


「香菜美、どうしたの?」


「どうしたのじゃないよ。やめなよ、みんな見てるしさ」


そう言われて、あたしはようやく周囲を確認した。


大きな声を出したせいで、登校してきた生徒たちがこちらを見ている。


「本当だ、気が付かなかった」


そう言っている間に京太は教室へ入って行ってしまって、あたしは肩を落とした。


「京太君とはもう別れたんでしょ? それなのに、あんな大声で呼ばれたら困るでしょ?」


香菜美の言葉にあたしは思わず吹き出した。
< 10 / 316 >

この作品をシェア

pagetop