命令恋愛
「チヒロを知ってるよね?」


そう質問すると、男子生徒はあからさまな動揺を見せた。


手に持っていたファイルを手落とし、目をパチクリさせてあたしを見ている。


「あぁ……えっとここじゃちょっと」


男子生徒からしてもまずい話なのだろう、すぐにカウンターから出て来た。


正面から制服のネームを確認すると3年A組中下カズマと書かれている。


中下はチヒロと同じ苗字だ。


「ごめん香菜美。ちょっと外してほしいんだけど」


図書館から出てあたしは香菜美にそう言った。


「わかった。でも……大丈夫なんだよね?」


香菜美はあたしとカズマを交互に見てそう言った。


「大丈夫。心配しないで」


あたしがそう言うと、香菜美は納得したようにクラスへと戻って行った。
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