命令恋愛
図書室からひと気のない渡り廊下へと移動して、あたしはカズマを見上げた。


「この前のことが写真に撮られてたの。犯人はチヒロで間違いないと思う。なにか知ってるんでしょ?」


「詳しくは知らない。俺は何も聞いてないよ」


カズマはそう言って左右に首を振った。


「本当に? それじゃ、あなたとチヒロの関係は?」


「俺とチヒロは従兄同士なんだ」


そう聞いてあたしは目を見開いた。


あまりに外見が似ていないから、身内だなんて思わなかった。


「あの日ゲーセンで声をかけたのも偶然じゃないよね?」


「あぁ。俺はただチヒロに頼まれてナンパっぽく声をかけただけ」


それであたしはまんまと騙されてしまったみたいだ。


「どうしてそんなことしたの?」


「だから、理由は知らないって。俺はお金をもらったから言われた通りにしただけだ」


お金……。
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