命令恋愛
☆☆☆

少し遅刻をして教室へ向かうと、「大丈夫?」と、香菜美が声をかけてきた。


「うん。今日はちょっと用事があって遅刻しただけ」


できるだけ元気な笑顔でそう言うと、香菜美はホッとした様子で「そっか」と、頷いた。


「でも、まだ顔色が悪いよ?」


「それは……」


誤魔化そうとして口を開いたが、ゲームのことまで黙っておく必要はないと思い直した。


「実はね、チヒロに勧められてダウンロードしたゲームがあるでしょ?」


「うん。一時期すごくハマってたよね」


「それがさ、なんでかスマホから消せないんだよね」


そう言い、あたしはスマホを取り出した。


「あれ? 機種変えた?」


「ううん、これ代用機なの」


「代用機?」


香菜美はそう言って首を傾げた。


画面上にゲームのアイコンがあることに気が付いたのだろう。


怪訝そうな顔をしている。
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