命令恋愛
早足に京太の家へ向かっていると、その後ろ姿に追いついた。


ホッとして声をかけようとしたけれど、途中で思いとどまった。


ここはまだ通学路だから、声はかけない方がいいかもしれない。


A組の生徒に見られるのは嫌だろうし、京太も恥ずかしくて会話ができないかもしれない。


照れ屋さんで可愛い京太。


そのまま後を追い掛けていると、あっという間に京太の家に到着してしまった。


京太が玄関を入ると、その姿は見えなくなる。


だけど、あたしはとっておきの場所を知っていた。


あたしは鼻歌を歌いながら道を挟んだ向かい側の家へと向かう。


この家は数年前から空家になっているようで、誰もいない。
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