命令恋愛
一階の窓ガラスを割って侵入した時も、誰にも気が付かれなかった。


あたしは馴れた手つきで窓を開けて、中へ入った。


そのまま真っ直ぐ二階へ向かう。


空家だからホコリまみれで汚いけれど、ある部屋に入ると途端に綺麗になる。


そこは6畳のフローリングで、窓から京太の部屋を見ることができるのだ。


この部屋を見つけてから、あたしはほとんど毎日ここに来ていた。


自分の部屋から持って来たクッションに座り、双眼鏡を目に当てる。


白いテースのカーテンの向こうで動いている京太郎の姿が見える。


制服を脱いで、着替えを始めているようだ。


京太の私服は黒色のジャージの上下で、家の中にいる時は大抵この服を着ていた。


京太の家には1度も入ったことがないけれど、家の間取りもほとんど把握している。


外から見た雰囲気と、生活音でだいたいわかる。


あたしは舌なめずりをして京太の様子を確認する。


ただそれだけの行為なのに、あたしの心は常に高揚している。
< 18 / 316 >

この作品をシェア

pagetop