命令恋愛
突然のあたしの説明に香菜美は瞬きを繰り返した。


「それで、恭介は片手に針を持っててね、あたしが言うことをきかなかったら、その針で刺して来たの」


一気に言って、大きく深呼吸を繰り返した。


今の説明で理解してもらえたとは思えない。


けれど、香菜美を前にしていると今朝の恐怖が蘇って来て、話さずにはいられなかった。


「ちょっと落ち着いてよ優奈。ゲームの中の恭介が命令してきたの?」


「うん」


「それはどんな命令だったの?」


「朝ご飯を作れって」


そう言うと、香菜美は少し安堵したようにほほ笑んだ。


「そういうストーリーなんでしょ?」


そう言われて、あたしは左右に首を振った。


あたしも最初はそうだと思った。


ゲームの中のユウナへ向けて言った言葉だと思っていた。


でも違う。
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