命令恋愛
あたしは自分の背中に汗が流れて行くのを感じながら、そっとスカートのポケットに手を入れた。


そこに入っているのはスマホのバッテリーだ。


高くて冷たいバッテリーが、ちゃんとそこにあることを確認する。


つまり、あたしのスマホは電源が入らない状態なのだ。


じゃあ、今の声はなに?


あたしの気のせい?


最近しっかり眠れていないせいかもしれない。


「なぁ、ユウナ?」


その声にビクリと身を震わせた。


やっぱり聞こえて来る……!


あたしの心臓は早鐘のように打ち始めていた。


そっと机の中に手を入れて、スマホを探す。
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