命令恋愛
鞄の中に入れていなくてよかった。


テスト中に鞄を開けるなんて大胆なことをすれば、すぐに先生にバレていただろう。


まるでカンニングをしているような悪い気分になりながら、そっとスマホを確認する。


その瞬間、恭介と視線がぶつかった。


思わず悲鳴を上げそうになり、慌てて右手で自分の口を塞いだ。


なんで電源が入っているの……!?


スマホの裏を確認してみても、やっぱりちゃんとバッテリーは抜いてある。


電源が入るわけがないんだ。


「なぁ、ユウナ」


そう繰り返す恭介の手にはピアッサーが握られている。


嘘……。


今はテスト中だから教室から出ることはできない、無理だ。


あたしは声を殺したまま、左右に首を振った。


画面上で恭介がピアッサーを弄んでいる。


「俺のためにジュースを買ってきてくれよ」
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