命令恋愛
「チヒロも同じ目に遭ってるんじゃないの?」


そう聞くと、チヒロは左右に首をふった。


「あたしはそんなことされないよ」


「なんで? ⦅イケメンの言うとおり♪⦆を、ダウンロードしてるでしょ?」


「もちろん」


チヒロはスマホをあたしと香菜美に見せて来た。


画面上には恭介の笑顔があり、もう冬のイベントが始まっていた。


「なんで? あたしのゲームと全然違う」


あたしのゲームは今イベントも四季も関係なく、ただあたしに命令を出しているだけだ。


「本当にわからない?」


チヒロはスマホをポケットに戻して、そう聞いて来た。


「なに……?」


まるで、あたし自身が何かを知っているような言い方だ。


「やっぱりね、やった方はすぐに忘れるんだ。これだけゲームをプレイしても気が付かないなんて、呆れる」
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