命令恋愛
カンニング
電源を落としても、バッテリーを抜いてもゲームは起動する。


今使っているスマホは代用機だから壊すこともできない。


仕方なく、あたしはスマホを家に置いて学校へ行くことになった。


友達と連絡が取れないと不便だけれど、仕方がない。


恭介はいつでもどこでも、自分の都合で命令をしてくる。


その命令に従わなければ傷つけられるのは自分だった。


「おはよう優奈。あれからなにか思い出した?」


自分の机に向かうより先に香菜美に声をかけられた。


「ううん、ダメ」


そう言って左右に首を振る。


昨日はあれからずっと考えていたのだけれど、やはり声の主を思い出すことはできずにいた。


人の声なんて、案外覚えていないものだ。
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