命令恋愛
「そっか……」


香菜美は残念そうに眉を下げる。


「あ、今日はスマホ持ってきてないから」


香菜美は同じクラスだけれど、念のためにそう伝えておくことにした。


休憩時間中、何気なくメッセージのやりとりをすることは日常茶飯事だからだ。


「え?」


香菜美はあたしの言葉に目をパチクリさせ、そしてあたしの鞄へ視線を向けた。


「なに?」


そう聞いて自分の鞄を確認したとき、鞄の外ポケットから白いものがはみ出していることに気が付いた。


一瞬頭の中が真っ白になる。


嘘でしょ……?


そっと手を伸ばして引っ張り出してみると、それは間違いなく代用機のスマホだったのだ。
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