命令恋愛
近くにいる香菜美にも聞こえていたようで、誰の声だろうかと教室内を見回している。


あたしは大きく息を吸い込んで、勢いよくスマホを取り出した。


案の定、ゲームはまた勝手に起動され、恭介が画面上にいた。


「なぁユウナ。カンンイングしてくれよ」


「なにこれ、キャラクターが言ってるの?」


香菜美が眉をよせてそう言った。


「うん……」


恭介の手を確認すると、右手にホッチキスを握りしめているのがわかった。


それを見た瞬間、ピアッサーで穴を開けられた耳が痛んで、顔をしかめた。


「これが命令ってこと?」


「うん。命令に従わなかったら、ホッチキスを刺されるんだと思う」


想像しただけで痛い。


画面上の恭介はアピールするようにホッチキスをバチンバチンと鳴らしている。


そのたびに使われなかった針が落下していく。
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