命令恋愛
「早く、保健室へ」


「うん……」


そう返事をしても刺されている場所が悪く、簡単に立ち上がることはできなかった。


足を少し移動させるだけでも痛みが強い。


それに、この針を抜いて行くのは保健室では無理だ。


病院へ行く必要があった。


どうにか教室から出たあたしは、そのまま女子トイレへ向かった。


「保健室まで歩けない?」


「それもあるけど……先生たちにこれをどう説明すればいいと思う?」


その問いかけに、青ざめた香菜美は黙り込んでしまった。


なにが原因でこんなことになったのか?


自分でやったのか?


誰かにやられたのか?


どう返事をしても、大ごとになることは確実だった。
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