命令恋愛
ゲームのことなんて絶対に言えない。


誰も信じてくれないだろうし、香菜美が触れた時にゲームは動かなくなった。


そんな中説明をするのは困難だ。


あたしはトイレの個室に入り、便器に座った。


太もものを使わないから、座っている方がマシだった。


「どうする気……?」


同じ個室に入った香菜美がそう聞いてくる。


あたしは制服の胸ポケットから小型のハサミを取り出した。


便利だから、いつも持ち歩いていてよかった。


「普通のホッチキスじゃ、この針は抜けないと思う」


肉に食い込んだ針は通常よりも大きく、自分たちが使っているホッチキスとは違うようだった。


あたしは自分の口にハンカチを入れて、力いっぱい噛みしめた。


「待って、なにするの……?」


その質問に返事をせず、ハサミの刃をホッチキスと肉の間に無理やりねじ込んでいく。


案の定、ホッチキスの針は通常より太く、そして長い。
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