命令恋愛
☆☆☆

すべての針を引き抜いた時、あたしの太ももは血だらけになっていた。


香菜美が涙を流しながらハンカチでそれをぬぐってくれている。


沢山穴が開いたあたしの太ももは、赤黒いドット柄に染まっていた。


「これで大丈夫だと思うけど……」


香菜美はそう言って涙をぬぐった。


あたしの太ももはキチンと消毒され、包帯が巻き付けられていた。


さっき香菜美が保健室へ行き、適当に理由をつけて持って来てくれたのだ。


「ありがとう。ごめんね香菜美」


痛み止めを飲んだおかげでようやく冷や汗が引いていた。


「ううん……」


香菜美はそう言ったきり、俯いてしまった。
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