命令恋愛
それでもあたしの体には生傷が絶えない。


母親や学校の友人たちを誤魔化し続けるのは難しそうだ。


「よかった」


ホッとしてため息を吐き出す香菜美。


「ねぇ、香菜美。あたし学校でなにか思い出しそうだったの」


ベッドの上から香菜美をみてあたしはそう言った。


「でも、まだ思い出せてないんでしょ?」


「うん……。でも、なにかひっかかるの。お願い、本棚から小学校の卒業アルバムを取ってくれる?」


「もちろん」


もうしばらく休んでいたかったけれど、明日になればまた新たな命令が下される。


それまでぼーっとしている暇はなかった。
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