命令恋愛
「おい! なにしてるんだ君たち!」


そんな声が聞こえてきて、ハッと息を飲んで視線を向けた。


奥の部屋からスーツ姿の見知らぬ男性が出て来たところだった。


なにか言い訳をして達治の両親に合わせてもらいたい。


そう思う反面、そんなことをしている暇はないと警告音が鳴り響いている。


「雅美は、早くコンビニへ行って!」


あたしがそう叫んだ瞬間だった……。


雅美の首が見えないロープによってギュッと締め付けられるのを見た。


雅美の首にはロープの形が浮かび上がっている。


「うっ……」


一気に締め上げられているようで、雅美の顔は見る見る内に赤く染まって行く。


「雅美!!」


あたしは悲鳴をあげて雅美にかけよった。


見えないロープに手を伸ばすが、その手は空中を這い回るだけでなにも掴むことはできない。
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