命令恋愛
「ごめん。彼氏いるんだよね」


場所を移動してから、あたしは田中君へ向けてそう言った。


「え?」


「2年A組の京太って知らない? カッコよくて結構有名なんだけど」


「知ってます」


「だよね? あの人と付き合ってるの。だから田中君とは付き合えない」


あたしの言葉に今度は田中君がキョトンとした表情になっている。


あたしが京太の彼女だってことに驚いているのかもしれない。


「でも、その京太先輩から聞いたんです」


「ん? 京太から聞いたってなにを?」


「鎌田先輩とはもう別れたって」


は……?


田中君はなにを言ってるの?


あ、そっか。


あたしを試すためにそんなことを言ってるんだ。
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