命令恋愛
そう考えると、もう理性は弾き飛ばされたも同然だった。


あたしは、あたしという人間がいるだけで大金になるのだ。


それを使わない手はない。


世間にどれだけ非難されても、どれだけ白い目で見られても、そんなの関係なかった。


あたしは、あたしを売りたいのだ。


足早に駅前に向かい、ソワソワとした気分で相手の到着を待った。


さっき、歩きながら登録したばかりの出会い系サイトで、早くも50代の男性をつかまえていた。


今日は休日で暇なおじさんたちが多いのかもしれない。


「ユウナちゃん?」


後ろから声をかけられて振り向くと、そこには50代前半を見られる男性が立っていた。


Tシャツとジーンズというラフな格好で、お腹も出ていないし禿てもいない。


さっきのおじさんに比べて見ても、随分と清潔感があった。


あたしはホッとして「はい」と、頷いたのだった……。
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