命令恋愛
「ちょっと、なによそんなに必死になって」


あたしの顔を見た香菜美が動きを止めて、ギョッとした表情になる。


今だ!


手を伸ばして香菜美からスマホを奪い返し、ホッと息を吐きだした。


「ちょっと優奈……本当に大丈夫?」


「なにが?」


あたしはまた画面にくぎ付けになり、そう聞き返した。


少しの間スマホが自分の手から離れただけで、体中に冷や汗が噴き出していた。


「そのゲーム、やってて平気なの?」


「何言ってるの? 昨日課金したばかりなんだから、やらないと損じゃん」


「課金って……。この前1万円分課金をして、もうお小遣いがないって言ってなかった?」


「うん。でも、バイトしたの」


「バイト?」


「ねぇ、もういいでしょ? ホームルームが始まるよ?」


あたしは香菜美の顔を見ずに、そう言ったのだった。
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