命令恋愛
昨日の出来事を思い出したあたしは、手の甲で涙をぬぐった。


「それは圧倒的に優奈が悪いよ」


話を聞いてくれていた香菜美がそう言うので、あたしは「どこが悪いの?」と、首を傾げた。


今思い出してみても、どうして自分が悪いのかわからない。


「本気で言ってる?」


香菜美は驚き半分、呆れ半分の表情でそう聞いてくる。


「わかってから、振られなかったじゃん」


「そりゃそうだよね……」


あたしの言葉に香菜美は頷く。


「ねぇ、あたしのなにが悪かったのか教えて?」


香菜美にそう言った時だった、開きっぱなしの教室のドアの向こうに京太の姿が見えた。


「あ、京太!」


咄嗟に席を立ち、廊下へと向かう。


後ろから香菜美が呼び止めるけれど、あたしはそれを無視した。
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