命令恋愛
あたしはまだ9月の文化祭イベントに差し掛かったばかりで、またチヒロに追い越されてしまっている。


そんな焦りが顔に出ていたようでチヒロが「また追い越しちゃった?」と、わざとらしく聞いて来た。


このままじゃチヒロが先に攻略してしまう……!


そんな焦りが浮かんできた時、香菜美の心配そうな顔が視界に入った。


あたしは大きく深呼吸をしてスマホ画面から視線を逸らせた。


恭介はゲームの中の男の子だ。


実際にモデルと会っても、付き合えるわけじゃない。


あたしは恭介のことが好きだけど、恭介はそうじゃない。


自分自身に現実をしっかりと思い込ませる。


「そっか。残念だなぁ」


軽い口調でそう言ったあたしに、チヒロは怪訝そうな顔を浮かべたのだった。
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