命令恋愛
☆☆☆

もう、今までみたいに、自分の気持ちを相手に押しつけるようなことはしない。


自分が相手を好きでも、相手の気持ちが同じだとは限らない。


変な勘違いをしちゃいけない。


下駄箱でローファーに履き替えて外へ出た時、いつものように田中君がそこにいた。


あたしと視線があうと、気まずそうな表情になってうつむいてしまう。


あたしは少し警戒しながらも田中君に近づいた。


「あの、なにか用事があるの?」


そう声をかけると、田中君は数歩後ずさりをして、それからあたしを見た。


「えっと……その……」


毎回ここで待っていても話しかけられなかったのだから、そう簡単に話せることではないのだろう。


そう察知したあたしは、田中君を校庭のベンチへと誘導した。


「なにか話があるから、待ってたんでしょ?」


グランドではウォーミングアップをしているサッカー部の選手たちの姿がある。
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