命令恋愛
告白自体が初めての経験なのかもしれない。


「そっか……」


田中君の気持ちは嬉しいけれど、すぐに返事をすることはできなかった。


今あたしの中で大半を占めているのは、恭介だったから。


恭介はゲームのキャラだと何度自分に言い聞かせてみても、思考回路の大半を持っていかれてしまう。


「あの、お試しでいいから、俺と付き合ってくれませんか？」


不意にそんなことを言われて、あたしは「え？」と、首を傾げた。


お試しで付き合うなんて、そんなの相手に失礼なだけだ。


それを自分から提案するなんて、相当な覚悟があってのことだろう。


「それでもダメなら、ちゃんと諦めます」


真剣な表情でそう言う田中君。


どうやら本気らしい。


こんな展開になったのは初めてのことで、どう返事をすればいいかわからなくなってしまう。
< 94 / 316 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop