未タイトル
" 『ねぇ、いかないで。死んじゃだめ…お願い、起きて…やだ、やだいかないで、…』

私が握っている彼の手が震えながら本の少し勘違いかもしれないほどに、静かにピクッと動いた。

『ど…こも、いか…ねえよ…。いく、わけ…ねえ、だろ…。だ…から、泣…くんじゃ…ねぇ…。』

…え?…

『わかるの…?私のことがわかる?!私だよ、トーカだよ!!』

涙で視界が歪んで、彼の顔がわからない。


『こ…え、でけぇ、な…。ははっ…。なぁ、トーカ…頼みが、あんだ…。』

『頼み…?』

私が聞き返すと彼は微かに微笑んで口を動かす。

その瞬間…

〈ピーーーーー〉"





「いやぁぁーー」

はっっ

まただ…。

またあの悪夢。

私が男の人の手を握りしめて泣いている。

彼はたぶんもう長くはなくて、

彼は最後の最後に私に頼みがあると苦しそうに話すけど、それだけがなぜか聞こえない。

そしてその彼が誰なのか、わたしにはわからない。

でも、ひとつ、わかることは彼は私の愛する人だということ。


こんな悪夢をここ何年か繰り返し見るようになった。

きっかけなんて、思いつかない。

いったいあれが誰なのか、そして彼の頼みとは何なのかそれだけがわからないまま一瞬にして夢から覚める。

不思議でたまらないけれど、それ以上に恐怖が私の心を埋め尽くす。

あんな夢、消えてなくなれ。















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