はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
我ながら大胆なお願いだ。

支配人は一瞬瞳を揺らして、握り合っている手に力を入れて、自分のもとへと私を引き寄せた。私の顔は支配人の胸にぶつかる。

支配人の心臓も私ほどではないが、はやく動いていた。


「こっち向いて」


後頭部に握っていない方の手を添えられて、自然と顔が上に向く。私を見下ろす瞳が近付いてきた。

今回は額でも鼻でもなく、互いの唇が重なる。柔らかく、温かい唇。手と手が触れあうだけで十分と思っていたけど、触れられた唇に堪らなく嬉しくなった。


「藍果ちゃん」

「はい……」


この距離で呼ばれると息がかかる。触れる息から伝わる熱を感じる間もなく、また唇が触れてきた。息よりも熱い唇から、更に熱い舌が私の唇をこじ開けて、侵入してくる。

私の舌も負けじと熱くて、どちらがより熱いかなんて分からない。触れてくる舌を必死で受け入れ、絡み合う。

お互いの息があがって、私の口内を堪能した舌が出ていく瞬間、「はぁ……」と自分の声とは思いたくないくらい甘い声が漏れた。


「もっといろんなとこに触れたい」


彼の要求を受け入れる。思う存分、触れてほしい。
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