はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
玲司さんは耳たぶから手を離して、私の肩を抱いた。その調子でコツンと彼の肩に頭が乗る。玲司さんの手はまたもや動いて、今度は私の頬を撫でる。

彼と一緒にいるとドキドキするのに落ち着く。不思議な感覚。


「大変だとは思うけど、お客様の気持ちに寄り添って、がんばって」

「はい。大変ですが、心からの笑顔を見ると元気になれます」

「そう、それなら良かった。ところで、藍果のスケジュールを見たんだけどさ」

「はい?」


今日出勤分の代休も取るようにしているので、指摘されることはないはずだけど?

なんだろう?と首を傾げた時、ドアがノックされる。


「ん? 誰だろう? はい、どうぞー」


玲司さんの返事に合わせて、寄せていた体を起こして、姿勢を正した。支配人室に来る人といえば、各部門のチーフくらいしか思い浮かばない。

私みたいな新入社員がここにいて、不審に思われないかと心配になるが、どこかに隠れることも出来ない。

しかし、玲司さんが開けたドアの前に現れたのは初めて見る女性だった。


「玲司。全然家に来ないから、顔見に来てあげたわよ」

「は? 母さん……」
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