はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
「その制服だと横川さんはブライダルにいるのかしら?」

「普段彼女は本社の営業部だけど、今日はブライダルのヘルプに入ってもらっているよ」

「今年入社で営業部? まあ、優秀な方なのね」

「いえ、それほどでもないです」


さすが社長夫人だけあって、会社の構成を理解しているようだ。感心されてしまったが、逆に恐縮しながら感心してしまう。

正面からよく見ると目元が玲司さんにそっくりで、本当にきれいな方だ。


「横川さん、そろそろ戻ったほうがいいと思うよ」

「そうですね。では、失礼させてもらいます」

「ああ、そのままでいいよ。俺が片付けるから」


自分が使ったカップを片付けようとしたが、玲司さんに止められる。今、彼は止めるために私の手に触れていた。

慌てて、その手を引っ込めて「ありがとうございます」とお礼を伝える。


「私も帰るわ。横川さん、途中まで一緒に行きましょう」

「は? 来たばかりじゃないの? まだコーヒーも残っているし」

「ああ、もういいわ。ごちそうさま。玲司、それも片付けてね。さ、行きましょう」


そっと背中を押されて、玲司さんのお母さんと支配人室を出た。
< 111 / 168 >

この作品をシェア

pagetop