はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
出るときに玲司さんの方を一瞬振り返ったが、彼は困ったような笑みを浮かべて、片手をあげていた。

お母さんとふたりだけになるのは予想外だが、とにかく良い印象を見せなくてはならない。

でも、エレベーターに乗ったら、ゆっくり話をする時間はない。


「一階でよろしいでしょうか?」

「あなたと同じ階で降りるわ」


一階を押そうとしていた私は「えっ?」と手を戻した。にっこりと微笑まれてしまい、ぎこちなく微笑み返す。

まさか同じ階希望にするとは……。三階で一緒に降りるが、ここからどうしたらいいだろうかと足を進めることが出来なかった。


「急いでいるところに申し訳ないけど、ひとつだけ質問させてくれる? あの子と付き合っているの?」

「あ……はい。お付き合いさせていただいています」

「そう。多忙な子だけど、愛想つかさないでね。今度時間があったら、うちに遊びにいらっしゃい」

「はい、ありがとうございます」


玲司さんとの交際を認めてもらったかは分からないが、遊びに来てと言われたなら悪くは思われていないと判断してもいいよね?
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