はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
急いできたと思われないようにしたつもりなのに、結局急いだことを白状するはめになるとは……。

でも、玲司さんがまた嬉しそうに笑ってくれたから良しとしよう。いけない妄想を知られるよりはいい。

「どうぞ」と出された白色のふわふわしたスリッパを履いて、リビングルームへ入る。


「えっ、なんですか? この広さ……」

「あー、追いかけっこできるくらい無駄に広いよな」

「いえ、無駄とは思いませんけど、こんなに広い部屋に入ったのは初めてでビックリしました」


何畳あるかなんて分からないけど、我が家のリビングの五倍はあるだろう。キッチンとダイニングも繋がってはいるけれど、広すぎる。

それに、物がない。テレビにソファーセットくらいしかなく、追いかけっこもできるだろうけど、ルンバが楽々動けそうだ。


「そこに座って。ケータリングがもう少しで届くと思うから」


そこと言われた場所はソファーだったが、何人も座れるL型ソファーのどこに座ったらいいのかと迷った結果、一番端に腰を下ろした。

グラスとワインを持って戻ってきた玲司さんが私から離れた場所に座って、笑う。
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