はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
まだ彼の顔が近くにあるのが恥ずかしくなり、彼の胸を押した。でも、離れてくれない。


「なにって、そのつもりで呼んだんだけど。藍果は何も考えないで、ここに来た?」

「私は玲司さんに会いたくて来ました」

「会うだけでいいの?」

「えっ? いえ、触れたく……」


言葉を返しながら、玲司さんの胸に置いていた手を彼の頬へと動かす。男の人にしては、きれいな肌だ。

触れられるだけでなく、私も触れたい。見つめる瞳に引き寄せられていく。瞳から先ほど触れ合っていた唇に視線を持っていき、そこに触れようと近付いた。


「あ、来たみたいだね。ごめん、続きはあとでして」


あと少しで触れられそうだったのに、鳴ったインターホンに邪魔された。玲司さんは人差し指を私の唇に当ててから、モニターを確認しに行く。

数分後、白いシャツに黒いパンツ姿の二人の男性が入ってきた。ホテルのルームサービスと同じように料理だけでなくカトラリーまですべてセッティングしていた。

手際よく進められていく作業は初めて見る光景で、私はただ呆然としていた。ダイニングテーブルの中央には赤い薔薇が入ったフラワベースまで飾られている。
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