はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
非日常な光景にすごいとしか言いようがなく、この庶民離れしたディナーにさすが支配人というか御曹司という単語が浮かんだ。

御曹司……。そう、玲司さんはいずれうちの会社の社長になる人だ。忘れていたわけではないけど、意識して考えないようにしていた。

考えたら、自分は彼にふさわしくない人物だと改めて思い知らされるから。でも、ちゃんと現実を見なくてはいけない。浮かれてばかりではいけない。

伝票かなにかにサインを玲司さんをした後、「ありがとうございました」とケータリングサービスの人が出ていった。


「藍果、温かいうちに食べよう」

「はい」


玲司さんはリビングテーブルに持ってきただけのワインとグラスをこちらに持ってくる。

玲司さんが座ろうとした時にまたインターホンが鳴った。


「ん? 何か忘れ物かな?」


テーブルの上を確認してから、応対する。


「は? 何しに来たの?」

『いいから、開けて』

「はぁー。はいはい、分かりましたよ」


耳に入ってきた女性の声は今日聞いた声だった。まさかと思うけど、ここに来ても不思議ではない人だ。


「あら、誰か来ているの? お邪魔して悪かったわね」
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