はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
「邪魔だと思うなら、すぐ帰っていいんだよ」

「何言ってるのよ。母親として挨拶くらい
するわよ。ほら、紹介して……、あら、横川さんじゃないの?」

「あ、すみません。お邪魔しています」


玄関からふたりのやり取りが聞こえてきて、私は立っていた、やはり、玲司さんのお母さんだった。

まさか本日二回もお目にかかれるとは……喜ぶべきなのか悲しむべきなのか判断しかねるが、頭を下げた。


「そう。支配人室だけでなく、家にまで呼ぶ仲なのね。あらー、ここの料理、美味しいのよね」

「二人前しかないから、母さんの分はないからね。これから食べるところだから、早く用件言って、帰ってくれないかな?」

「そんなに急かさなくてもいいでしょう? はい、これ。ふたりくらい選んだら、連絡ちょうだい。選べないなら、私が選ぶから」

「は? 父さんに言われて、断ったはずだけど」


お母さんは白い紙袋を玲司さんに渡そうとしたが、彼は受け取らない。たくさんの封筒が入っているのが見えた。

あの封筒の中身はなんだろう?

「私もね、お父さんから言われて、玲司が自分で探すと言うならその方がいいと思ったけど、横川さんを見て、気が変わったわ」
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