はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
「どういう意味?」

「確かにきれいだし、本社に配属されるくらい良い子だとは思うけど、普通の家の子よね?」

「普通の家で何が悪いの? 俺だって普通の男だよ」

「違うわよ、玲司。自分の立場を考えなさい。うちに合った家のお嬢様と結婚しなくてはいけないのよ。結婚を別として付き合うだけならいいけど、そろそろ身を固める年齢でしょう? かわいいだけで、若い子と付き合っている場合ではないのよ。ちゃんと考えなさい。じゃあね、お邪魔しました」


お母さんは話すだけ話して、紙袋を玲司さんに押し付けた。彼が返そうとしても拒否して、出ていく。

玲司さんは肩を大きく落として、こちらを振り向いた。


「ごめんね、藍果。嫌なとこ見せちゃって。母さんの言うことは気にしなくていいから」

「でも」


玲司さんは私を安心させようとしているのか手を握ってきた。温かい手から彼の優しさが伝わってきたが、私は首を横に振った。


「藍果?」

「ごめんなさい。私、ここにいてはいけないですよね。だって、玲司さんにふさわしくないもの……」


涙がひと粒、私の手を握る玲司さんの手に落ちた。
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