はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
パスタをフォークにくるくる巻きながら、彩音は苦笑する。喜んではいけないけど、喜んでしまう気持ちは分かる。

私も好きな人から別れたと聞いたら、辛いねと慰めながらも喜んでしまうだろう。自分にチャンスが来たと思ってしまうだろう。


「彩音は片瀬さんに会いたくて、こっちに来たんだものね。片瀬さんがフリーになったと喜ぶのは当然だと思う。片瀬さんも何度かふたりだけで食事に行くくらいだから、彩音のことを気にしているんだろうね。うまくいくといいね」

「うん、そうだけど……私また振られたくない」

「うん? まだ付き合っていないよね?」

「私から好きと言って、また断れたらと思うと言えないから、向こうから言ってくれるのを待とうと思うの。もし言ってくれなく、他の誰かと付き合うようになったら、その時は縁がなかったとキッパリ諦めるつもり」


諦めるといった彩音の顔はキリッとしていて、迷いのない感じだった。片瀬さんの気持ちがどうなのかは今のところ分からないそうだ。

ただの同僚として見ているのか、昔の知り合いとして見ているのか、恋愛対象として見ているのか片瀬さんの態度からは判断が難しいらしい。
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