はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
だけど、突然過ぎて、何を話したらいいか分からない。玲司さんは前触れなく現れることが多い。

私は今、なぜか彼のマンションに連れてこられている。一度断ったのに、ちゃんと話がしたいと懇願されて断り切れなかった。

彼の淹れてくれたコーヒーをひと口飲んで、私は項垂れていた。何で来てしまったのだろう。

しかし、彼の言葉で顔をあげる。


「この前の見合い写真は翌日に返したし、両親には俺の気持ちを伝えた。俺が結婚したいと思うのは藍果だけだと」

「そ、そんなことを言って、ご両親は納得されました?」

「母親は納得してなくて、あれこれ言ってたけど、俺の気持ちは揺るがない。藍果と結婚出来ないなら、一生独身でいると宣言した」

「えっ、独身でと?」


玲司さんはとんでもないことを宣言したのでは?

独身でいるとまで言ってしまって、ご両親の反応はどうだったのだろう。


「父親は大笑いしたよ。あの人は楽天的なところがあるから。母親は唖然として口をパクパクさせてから、バカなことを言わないで!と怒っていたけどね」


穏やかそうな社長の大笑いする姿は想像できないが、玲司さんのお母さんの怒る姿が想像できて、頭が痛くなる。
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