はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
玲司さんはちゃんと自分の立場を考えているのかと心配になった。感情だけで宣言していいことではない。

玲司さんの将来には会社の将来もかかっていて、ホテル従業員とその家族の将来にも関わってくる。自分ひとりだけの問題ではない。


「私、玲司さんと結婚するつもりはないです。だから、ちゃんと自分に合うお相手を探した方がいいと思います」

「どうしてそんな冷たい目で俺を見るの? 藍果、俺を好きだと言ってくれただろ? もう好きじゃないの?」

「はい、もう好きではありません。玲司さんへの想いは冷めました」

「本当に? 誤魔化さないで正直に話して」


玲司さんは私が持っているカップを取り、テーブルに置いてから、私の両手を握る。彼の手は熱くて、私を見つめる瞳も熱い。

お願い、そんな瞳で見つめないで。

決心が揺るいでしまう。


「俺が藍果じゃない誰かと結婚してもいいの?」

「はい、その時は祝福します」

「藍果じゃない女を好きになってもいいの?」

「はい、他の人を好きになって、結婚してください」

「藍果じゃない女を抱いてもいいの? 藍果と同じように」


私と同じように抱く?

一瞬返す言葉に詰まった。
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