はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
他の女性に優しく触れて、熱く抱く……想像したくないけれど、玲司さんが望んで抱くならいいはず。うん、いいはずだ。


「いいです。お好きなように」

「何で泣くんだよ」

「えっ、泣いてなんて……あっ」


頬を触ると手が濡れた。私が決めたことだから悲しいなんて思ってないのに……涙がひと筋、頬を伝っていた。

玲司さんは私を自分の胸へと引き寄せる。彼は強く私を抱き締めて、優しく背中を撫でた。


「意地悪なことを聞いて、ごめん。だけど、藍果の本心が知りたい」

「泣いて、ごめんなさい」

「そんなこと、責めていないから。それより聞かせてよ。こんなふうに触れるのもイヤなくらい、嫌いになった?」

「嫌いになんて……」


好きだとは言えないけど、嫌いとは言えない。もう好きではないとは言えるけど、嫌いになったとは言えない。

だって、嫌いになれない。

抱き締められて、胸までがぎゅっと締め付けられた。体だけでなく、心まで彼に縛られたい。

頭では拒否しなければいけないと思っているのに、まだ心と体は彼を求めている。触れられることを喜んでいる。

ダメなのに……。
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