はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
「離してください」

「イヤだ。絶対離さない」


玲司さんが力を強めた時、ピンポーンとインターホンが鳴った。私たちは動きを止めて、顔を見合わせる。

玲司さんは力を緩めない。


「誰か来られたようですよ。出た方がいいですよ」

「いい、来客の予定はない」

「でも」

「今藍果を離したら、逃げるだろ?」


その通りだ。良いタイミングに鳴ったと思った。

しかし、出ないから、また何度か鳴らされる。


「また鳴りましたよ。逃げません。ここにいますから、出てください」

「じゃあ、ここじゃなくて、部屋に戻って」

「分かりました」


私が立ち上がるのを確認しながら、インターホンに返事をする。


「ああ、今開ける。……藍果! おいっ!」


立ち上がった私は玲司さんの後ろ姿を確認して、素早くパンプスを履いて、出た。今度はスムーズにいった。

ドアが閉まった瞬間、呼ぶ声が聞こえたが、振り返らずにエレベーターへと急ぎ、ボタンを押す。

4台あるうちの1台がタイミング良く、下の階に止まっていてすぐに来た。ロビーまで止まることなく、降りる。

あとは一気に駅まで走る。
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