はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
予想外な真実ではあったけど、私は「そうですか」と頷いた。ずっと気になっていたことが知れて、満足ではある。

こんな状況の中で聞く話ではなかったかもしれないが。


「変な噂の誤解も解けたから、早く帰って。飲み終えただろ?」

「はいはい、帰りますよ」


藤島さんは短く息を吐いてから「無理やりはダメだからね」と玲司さんに念押しして、出ていった。すっかり帰りそびれてしまった私はもう諦めに近い気持ちが出ている。

玲司さんが納得してくれるまで、とことん話すしかない。逃げても追われるだけで、解決にならない。

でも、話し合ったとしても平行線にしかならように思う。


「さてと。もう逃げないでね」

アイスティーを飲みながら、頷く。玲司さんは穏やかに笑みを浮かべて、私の頬に触れる。


「もう泣かないで。もう泣かせたくない」

返す言葉が見付からず、ただ見つめ返した。別れに納得してもらえるような酷い言葉がないかと必死で考える。


「私、もうここにいたくないです。もうプライベートで玲司さんの顔を見たくないです」

頬に触れていた指がビクッと動いた。
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